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<こっち こっち>
「急にペース上げないでよ……」
<きょう みおわれなくなっちゃう はやく はやく>
「はいはい。」
歌子さんは、
ガラス越しに巨大な蛇を愛でていようとも、
僕の苦手なコウモリを見て可愛いと浮かれようとも、
うさぎを抱っこしたらうさぎが異常に大きく見えようとも、
「ヤギに乗れそうですね」とか飼育員に言われようとも、
風に舞う髪が飴細工のように透き通っていようとも、
手を太陽にかかげたら透けて見えるんだよとか言おうとも、
その手を僕が握ると小さく身震いしようとも、
手汗を気にしてゴシゴシしてからもう一度握り直してこようとも、
とにもかくにもだ。
僕にとっては彼女は唯一無二の愛すべき女性で、
僕にとっては彼女以上に美しい物など存在しなくて、
僕の世界は彼女を中心に回り始めていて、
僕の存在意義自体が彼女なしには見いだせない事に違いはない。
安心しろ、雪将。
不安になるな、雪将。
彼女の返事はイエスだ、雪将。
その証拠にほら……
<雪将くん>
こんなにも優しい表情で僕の名前を呼んでくれるじゃないか。
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