#05 * 雪将

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<こっち こっち> 「急にペース上げないでよ……」 <きょう みおわれなくなっちゃう はやく はやく> 「はいはい。」 歌子さんは、 ガラス越しに巨大な蛇を愛でていようとも、 僕の苦手なコウモリを見て可愛いと浮かれようとも、 うさぎを抱っこしたらうさぎが異常に大きく見えようとも、 「ヤギに乗れそうですね」とか飼育員に言われようとも、 風に舞う髪が飴細工のように透き通っていようとも、 手を太陽にかかげたら透けて見えるんだよとか言おうとも、 その手を僕が握ると小さく身震いしようとも、 手汗を気にしてゴシゴシしてからもう一度握り直してこようとも、 とにもかくにもだ。 僕にとっては彼女は唯一無二の愛すべき女性で、 僕にとっては彼女以上に美しい物など存在しなくて、 僕の世界は彼女を中心に回り始めていて、 僕の存在意義自体が彼女なしには見いだせない事に違いはない。 安心しろ、雪将。 不安になるな、雪将。 彼女の返事はイエスだ、雪将。 その証拠にほら…… <雪将くん> こんなにも優しい表情で僕の名前を呼んでくれるじゃないか。
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