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そうは言うもののだな……
いざ歌子さんを目の前にすると、
シミュレーション通りに出来ないのが、僕だ。
「お、おはよう、歌子さん。」
<おはよう>
彼女は特に動揺する様子もなく、お決まりの席に座って、
いつも通り本を読んでいた。
大人しく彼女の向かいに腰をおろすと、
勉強道具を取り出して机に並べる。
「来週はもう7月だね。」
<そうだね>
「7月に入ったら期末テストがあるね。」
<そうだね>
「で、でも、テストが終わったら、な、夏休みだもんね。」
<そうだね>
「な、夏休みは、僕、毎年家族で旅行に行くんだよね。」
<……そうなんだ>
しまった。旅行の話題はタブーだっただろうか。
「うっ、歌子さんはっ!その……夏休みの、予定とか……」
そこで彼女は本を閉じると、まじまじと僕を見た。
<とくに ないけど>
「……なら、僕と、どこか…遊びに行き、ませんか……」
彼女は驚いたように目を見開いている。
そうですよね。やっぱり外出なんて無理ですよね。
普通に考えれば分かる話ですよね……
<いいよ>
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