#05 * 雪将

7/21
前へ
/21ページ
次へ
ーーーーー 「じ、じゃあ、また7月30日。」 <うん> 「10時に、動物園前で。」 <うん> 終業式が終わり、歌子さんを家まで送り届けて、僕は言った。 テストも終業式も、この夏休みを迎えるためだけにある、 他愛もないプロセスの一つにしか思えなかった。 7月30日。 この日を選んだのには、理由がある。 僕と歌子さんの、記念すべき”1ヶ月記念日”だ。 とは言ってもこの1ヶ月間、 特に何か恋人らしいイベントがあったわけでもなく、 余裕しゃくしゃくな歌子さんに引けを取らないように、 僕も「えぇ、まぁ恋人と言っても、学生なんでね。」みたいな、 心にもない冷静な態度を装うのに一生懸命で、 やっと自然に接する事に慣れた頃、テスト期間に突入し、 勉強という荒波にもみくちゃされていた。 テストが終われば、休む間も無く終業式が待っているわけで、 今日、無事にこの日を迎えている。 「じ、じゃあ、また7月30日。 <うん> 「10時に、動物園前で。」 <うん たのしみに してるね> ーーーーー
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加