#05 * 雪将

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兄弟で散々ファッションショーを繰り広げた結果、 青色のグラデーションのTシャツに、黒のデニムジーンズという、 比較的シンプルかつ落ち着いた格好で、 僕は動物園前に立っている。 時刻は午前9時45分。 10時の待ち合わせに遅くもなく、早すぎもしない、 妥当なタイミングで現地に到着した。 心臓がバクバクと鼓動している。 手にはじわじわと汗がにじみ、 さほど暑くもないのに背中に水滴がしたたる。 再度、時計を確認した。時刻は午前9時46分。 時の流れとは、こんなにも遅いものだっただろうか。 落ち着くんだ。待ち合わせまではあと15分近くある。 焦っても仕方がない。 ここは男らしく、気長に待つんだ。 10時。 彼女はまだ来ない。 女の子が少し遅れて来るのは、デートの定番だ。 きっと支度に時間がかかっているのだ。 着る洋服に迷ったり、バッグやアクセサリー、髪型…… 女の子の支度は、とてつもなく時間がかかるものだとアニメで見た。 10時15分。 彼女はまだ来ない。 何かトラブルがあったのかも知れない。 予想以上に雑音に苦しんでいるかもしれないし、 電車の騒音に耐えられず、どこかの駅で降りたのかも…… 家に帰ってしまったかもしれないし、 そもそも今日は来ないのでは…… 今更ながら、彼女の家まで迎えに行かなかったことが、 本当に悔やまれる。
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