第1章

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やばい!遅刻だ!! 部活の先輩に押し付けられた後片付けを超特急で終わらせた俺は、待ち合わせの駅に駆け足で向かった。 「ごめん!遅くなった!!」 俺は彼女を一目見るなり、直様謝った。しかし、彼女は静かに本を読み続けるだけで、何のリアクションもない。 怒っているのか? 不安になった俺はどうしたらいいのか分からず、ただ突っ立っているしかできなかった。 蝉の鳴き声が響く。古いこの駅にはクーラーは勿論なく、夏のムッとした暑さが待合室に立ち込み、身体中から汗が流れ落ちる。それにも関わらず、彼女は静かに本を読み続ける。まるで図書室で読んでいるかのようだった。 それをジッと見ていると、彼女はふとこちらに視線を上げた。 「あれ? いたの?」 目をぱちくりさせた彼女はいそいそと本をしまい始める。 「じゃあ、行こうか」 何事も無かったかのように言う彼女。どうやら、俺の杞憂だったようだ。
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