冬のカポエラ

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 伊狩知世子はこのサークルの部長で、現在はとある病気のために長期離脱している。  サークルの名前は『蛍発の会』という。自己啓発を目的としているらしいが非常に活動が曖昧で、彼らも特に強い興味や意思があって入会したわけでもなかった。  同じ学部で何となく話をするようになった光一と健太が二人で大学内を歩いていて伊狩から勧誘された。特に目的もなく何かやろうかと思っているところへ声をかけられ、そして部長がちょっとした美人だった事が入会の理由となっていたようだ。風子の方も特に理由はなかったけど、伊狩部長の誠実な態度に何か惹かれるものを感じたようだった。  どことなく主体性の欠けた面々だったが、誠実な部長に引っ張られてサークルはその体裁を保っていた。その部長が不在となって数週間が経つが、特に誰も抜けようともせずサークルは存続を続け、今日もこうして集まっている。  ただサークルの目標は失われていた。そんな中で唐突に健太がカポエイラの話を持ち出したのだった。
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