2人が本棚に入れています
本棚に追加
私には癖がある。
B「すまないが、次の汽車はいつくるのかね?」
ふと声をかけられ、読んでいた本から目を声の方向に向けた。
と、同時に私は息を飲む。
A「えっと、あと5分で電車来ます」
少しうわずった声で返した。
老人は着物にハット、そして丸メガネ。
ちょっと時代遅れの格好をしていたが、とてもよく似合う。
B「そうか、ありがとう」
A「いいえ」
私はもう一度読んでいた本の最後のページをそっと見ようとした。
B「今読んでいた、その次のページからが重要だ」
A「え?」
顔をあげるとその老人はもういなかった。
「作者没後60年。未発表の大作」
本の帯が風でたなびいた。
最後のページにある作者紹介の写真には
着物にハット、丸メガネの老人がいた。
本を最後から開く癖がこれからは無くなりそう。
最初のコメントを投稿しよう!