第1章

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私には癖がある。 B「すまないが、次の汽車はいつくるのかね?」 ふと声をかけられ、読んでいた本から目を声の方向に向けた。 と、同時に私は息を飲む。 A「えっと、あと5分で電車来ます」 少しうわずった声で返した。 老人は着物にハット、そして丸メガネ。 ちょっと時代遅れの格好をしていたが、とてもよく似合う。 B「そうか、ありがとう」 A「いいえ」 私はもう一度読んでいた本の最後のページをそっと見ようとした。 B「今読んでいた、その次のページからが重要だ」 A「え?」 顔をあげるとその老人はもういなかった。 「作者没後60年。未発表の大作」 本の帯が風でたなびいた。 最後のページにある作者紹介の写真には 着物にハット、丸メガネの老人がいた。 本を最後から開く癖がこれからは無くなりそう。
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