一ヶ月

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そして、数日後、また俺は運命の出会いを果たす。 偶然また街で「マツシタサヤ」に出会うことができたのだ。 「あ、来栖くん、もう具合は大丈夫なの?」 「ああ、心配ない。」 「ふふっ、相変わらず、へんなのー。」 それから、俺達は時々、会うようになった。 「ねえ、来栖君ってどこに住んでるの?」 そう問われて俺は返答に困った。 「河川敷のベンチ。」 そう答えると、サヤはポカンとした。 「またまたぁ、真面目な振りしてサヤをからかってるんだねえ?」 そう言って信じてもらえなかった。 「今日ね、うち、親が留守なんだ。一人で女の子が留守番って物騒でしょ?来栖君、今日、サヤの用心棒になってくんない?」 サヤがそう言いながら俺の手をとり、上目遣いに見てきた。 もう俺の心臓は爆発寸前だった。 「あ、ああ。良いのか?」 それは、額面通りに取って良いのだろうか。 サヤは小さな顔を俺に近づけると、息がかかるほどの距離で耳元に囁いた。 「いいよ。」 俺は天にも昇る気持ちだった。 死んでもいい! いや、今死んでたまるかよ。 俺はサヤの家に招かれた。 サヤは俺に手料理をご馳走してくれた。 あの戦場で戦っていた俺に、今こんな幸せな時間が訪れるとは夢にも思っていなかった。 「お風呂、沸いてるよ。」 そう言うと、俺にサヤが風呂を勧めてきた。 俺は遠慮なく、いただく。 風呂など、どれくらいぶりだろうか。俺が風呂に入っていると、脱衣場のあたりに人の気配がした。 後ろを振り向いた。 サヤ? 嘘だろう? まさか、入ってくるつもりじゃあ。 「来栖君、サヤも入っていい?」 俺は頭に血が上った。 そして、違う所にも血が上った。恥ずかしいほど充血している俺自身。 もうダメだ。我慢できない。 風呂のドアが開けられる。 「サヤ!」 俺は、サヤを抱きしめようと走った。 すると、サヤは驚愕の表情を浮かべ叫んだ。 「キャア、ゴキブリっ!」 スローモーションのように、巨大なスリッパが俺に向かって振り下ろされた。 俺の体のいたる所から内臓が飛び出す。 「残念じゃったな。時間切れじゃ。」 神様、そんな殺生な。 俺はあと少しというところで、元のゴキブリの姿に戻ってしまったのだった。
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