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ギガントマキアの大戦に破れた我々は、絶望の淵に立たされていた。
もはや、我々の部隊は、ほぼ全滅。圧倒的な力と体を有するギガンテスの前に、我々はあまりにも脆弱で無力だった。二度と逃げることのできない要塞に捕らわれて捕虜となり身動きが取れずにそのまま死に行く兵もあれば、完膚なきまで叩き潰されてほぼ原型をとどめない兵もいた。
まさに、戦場は地獄絵図だった。
ただ一人、この部隊で生き残った俺はといえば、ほぼ虫の息だった。
せめて、死ぬ前に一度だけでも恋をしてみたかった。
俺は女も知らずに、このまま朽ち果てて行くのか。
そう思うと、自虐的な笑いすらこみ上げてくる。
その時、強烈な光が俺の視界を遮った。
「哀れな有限寿命者よ。」
俺の目の前に、光る巨像が現れた。
「誰?」
俺がかすれた声で問うと、それは答えた。
「我はウラノス。母なる大地、ガイアから生まれしわが子よ。哀れなお前の願いを一月ほど願いを叶えよう。」
何を言ってるんだ?こいつ。意味がわからねえ。
そして強烈な光が俺を包んだ。
俺はしばらく眩しさに目を開けることができなかった。
「大丈夫ですか?」
俺はその声にようやく、目を開けることができることに気付いた。
俺の目の前に、天使が現れた。ここは天国か?
だが、この女は天使にしては様子が変だ。美しい女だが、翼は無い。女神か?
なんだかおかしな格好をしている。袖は短く、衿がやけに広い上着を着ており、ドレスのすそはやけに短い。
これでは、女性の大事な部分が見えてしまうではないか。俺は顔を赤らめた。
「大丈夫。心配ない。」
俺は意外と、自分の体が復活していることに驚きが隠せなかった。
「気分が悪いんでしたら、あそこに病院がありますよ?」
その女は、病院と呼ぶ巨大な建築物を指した。
「本当に大丈夫だ。心配をかけてすまない。」
私がそう言うと、女はぷっと息を噴出して笑った。
「変な人。まるで、昔の人みたいにしゃべるんだね。」
笑顔が眩しかった。俺は心臓がバクバクと音を立てて、女に聞かれてしまうのではないかと思った。
「大丈夫なら、私、行くね。」
そう言うと小さく手を振って女は去ろうとした。
「あ、待って。おぬし、名は?なんと申す?」
女が振り向いた。真っ白な歯をむき出して笑った。かわいい。
「サヤ。松下サヤだよ。あなたは?」
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