プロローグ

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オーブンから出したばかりの天板を持って現れたのはいつも満面の笑みで私を歓迎してくれる橋本さんだ。 綺麗に発色したオレンジ色のチークが彼女の笑顔を引き立たせている。 彼女は天板に並んだアーモンド形のクリームパンを私に見せた。 覗き込んだ天板からはオーブンから連れてきた熱気と共に、ほのかなカスタードの匂いが漂っていた。 トングで持ち上げたクリームパンは薄いパン生地の中にたっぷりと閉じ込められたクリームの重みでわずかに形を変える。 「じゃあ、これください」 私が迷わず返事をすると、橋本さんは「ありがとうございます!」と、私のトレイにクリームパンを乗せてくれた。 「おいしそう」 私は彼女に微笑むと、サンドイッチコーナーに移り、蒸し鶏のレモンサンドを取ってレジに向かった。
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