第1章

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学校からの帰り、たまたまA先輩に会ったから一緒に帰ることになった。 A先輩と帰るなんて今までなかったから少し緊張しているのが、自分でも分かる。 A先輩といえば、文武両道・成績優秀 性格も、優しい。 昔で言う大和撫子みたいな完璧な人だ。 僕は、みんなと一緒なら目立たない。 言うなら地味なんだろう。 A先輩とは部活が一緒なだけだ。 でなくては、僕はA先輩の目にとまったりはしない。 そんな感じ。 だから、僕はこの気持ちに蓋をしている。 あの日にA先輩を見てから思っているこの気持ちは多分好きなんだ。 でも、つり合わないって分かってるから大丈夫。 そっとしまっておく。 今のままが多分一番いいのだ。 A「バスまだ来ないみたいだね。」 B「そうですね。 でも、あと15分もかかりませんよ。」 カバンから先輩が出したのは、少し厚めの本だ。 A「これ、なんでしょう?」 先輩はたまに意地悪だ。 チラッと僕を見て綺麗に笑う。 本の内容は分からないが、多分先輩が一番好きな明治あたりの人の本。 B「わかりませんよ。」 A「B君は、体重何グラム?」 即答だった。 でも、おかしい。普通は何キロだろう。 B「…えっと、64000グラムです。 これヒントですか?」 175センチあるから、普通だと思うがなんだろう? A先輩は本の表紙を撫でみながら、 じゃあ、と続けた。 A「私への、想いは何グラム?」 思わず、目を見開いた。 先輩知っていたのかとか、すっ飛ばしていた。 ゴクッと喉が動いた。 一度だけ、下を向いた。 B「計れませんよ。」 僕が言うと、先輩は本から顔をあげた。 だって、と続けながら先輩の顔をまっすぐ見て B 「先輩、月が綺麗ですね。」 言ったとたん、先輩が笑った。 A「遅い。」 ああ、これでも勇気いったのに。 先輩は意地悪だ。 夏目漱石がいった言葉。 I love you. 先輩が楽しそうに笑う。 笑った先輩が僕は一番好きだ。 A「夏目漱石だよ。本。」 先輩が言った。 B「なら、当てましたね。」 end.
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