第1章

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午後5時。それは名前も知らない彼女とあるバス停で会える時間。この時間に行けれるように、蝉の大合唱を無視しバス停までの道を必死に走るのが日課。 バス停に着いたものの話すきっかけが見つからず、話しかけられないまま彼女は僕と違うバスに乗って僕の知らないところへ去っていく。それが続く毎日。 けど、今日は勇気を出して…… B・そ、それ可愛いね! あまりの緊張に思わず噛んだ。いまの僕は確認は出来ないけど多分ゆでダコみたいに顔が真っ赤になっているだろう。 A・え?あー、これ?ありがと。自分で作ったんだ。うまくは出来なかったけどね。 緑色のカエルの人形を持ち上げ、こちらを向き微笑みながら彼女は答える。 B・すごいね!!僕なんか不器用だから自分では作れないよ。 その微笑みに心臓が高鳴り、熱が引いてきた頬が再度熱を持ち始める。 A・練習したらすぐ作れるようになるよ。お互いがんばろっ! その時、ゴトゴトと大きい音をならしながら、おんぼろのバスが到着。 A・あ、来ちゃったからここでお別れだね。楽しかったよ!ありがとうね。 と、立ち上がりバスに乗ろうとした彼女に向かって手を振りながら言った B・あ、ありがと!練習してみるから、作れたらみせるね!!またね! すると、バスに乗り込もうとする足を止めて、こちらを振り向き苦い顔をしながら A・もう引っ越しが済んじゃったからもうここには来れないの。ごめんね。また会えたらその時に見せてね。 と残し、バスの奥へ。 あまりのショックに何も言えず、バスの奥へいく彼女の後ろ姿を眺め立ち呆けるしか出来なかった。 願わくば、バスよ。壊れてよ。最後にもう少し時間をちょうだい。 その願いは叶わず、おんぼろのバスは僕の知らないどこかへ去っていった。
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