第三章

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 ある朝、俺は電車の中で不思議な彼女に出会った。 「ちょっと、君」  すると、彼女は振り返る。声に気がついたみたいだ。 「君って、私のこと言ってるの?」  彼女はそう答えた。 「そうだけど、そこで何してるの?こんなところで寂しそうに」  俺が言うのも何だけど、彼女は、一人でじっと座りながら、こっちを見ている。さも寂しそうに、俺の顔を見ながら。 「だって、似てたから」 「似てたって誰に?」 「亡くなったおじいちゃんに」  彼女から聞いた話によると、俺の目元や口元が、亡くなったおじいちゃんに似ていたという。 「そんなに似てるの?」  彼女の口元は、うっすらと笑みが浮かんでいる。  それから俺たちは、駅に着くまでずっと、互いの身の上話をしていた。
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