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びしょびしょのまま、ほとんど放心状態で寺へと戻ると何やら騒がしい。
「どうしたんですか?」
「住職が近くの川で死んでたんだよ」
近所のおじさんは警察が来るからと、慌ただしそうに行ってしまった。
恐怖で体が固まった。
さっきの人魚だ…。
何故か僕は確信していた。
何故、住職なのかは分からなかったが、あの人魚の仕業に間違い。
しかし、そんなことを警察に言えるわけがない。
僕はただただ、無言で事の成り行きを見ていた。
後で聞いた話では、昔このあたりは宿場町として栄え、娯楽施設などもたくさんあったらしい。
しかし、そのため身売りする女性や、見世物小屋のようなもので働かされた人が多くいたという。
中でも寺の一角にあった「人魚が見れる見世物小屋」が人気だったようだ。
人魚とは名ばかりで、若い女の子が作り物の下半身を付けて、客の前に出てくる店だった。
あの人魚も、そんな店で無理矢理人魚にさせられた女の子だったのだろうか?
僕は、あの憎しみのこもった瞳を忘れることが出来ない。
あの人魚は寺の住職だけで怨みを晴らせたのだろうか?
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