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先ほどと変わらず可愛い顔だが、とても『可愛い』とは思えなかった。
憎しみをあらわに、きつく細められた瞳が僕を捉える。
電気が走ったように、身震いが止まらなかった。
口角だけ上げて、ニヤリと笑う人魚に僕は恐怖しか感じなかった。
殺される…!
そう思った瞬間、バシャッと池の水が全身にかかった。
「!?」
反射的に腕で顔を庇う。
ヤバい…ヤバい…ヤバい…!
逃げないと…!
しかし、顔を庇う腕を退かすことも、その場から立ち去ることも出来ず、気持ちだけが焦る。
足が震えて、嫌な汗が全身から噴き出す。
もはや、池の水なのか汗なのか分からないくらいびっしょりになり、気持ちが悪かった。
さっき見た人魚の表情 が、脳裏から離れない。
しばらく何も起きなかった。
それが数秒なのか数分なのかすら分からなかった。
もう、どうにでもなれ…!
意を決して、僕は腕を少しずらしてみた。
そこには、先ほどまでいた人魚は跡形もなく消えていた。
「はぁぁ~…」
一気に緊張が解けてその場に座り込んだ。
何だったんだ、あれは…?
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