第5章 始まり

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始業時間に近づくと 続々と人が集まってきて、 あっというまにフロアが活気づいていく。 聡が同じフロアのため、 ちょこちょこっと職場に寄ってくれた。 「吉永、おはよー。今日からだな。 五十嵐さん、こいつのことよろしくお願いします。」 「うん。こちらこそ頼りにしてるよ。」 五十嵐さんはさらっと言った。 なんだかとても嬉しかった。 「吉永ー。五十嵐さんは穏やかそうに見えて、 仕事は中々手厳しいよー。頑張れよー。」 そういって聡は去って行った。 五十嵐さんは、聡の言葉にかぶりをふっていたけど、 会社の倒産を防いだり、事業の立ち上げの部署を 渡り歩いてきた人が、ただ優しいだけの人ではないことはわかる。 厳しい判断や的確な指示があったからこそ、 これまで評価されてきたのだろう。 正直、今まで私は仕事上で、 そういった評価にさらされてきていない。 ひとまずはそのプレッシャーさえも 追い風にできるよう、私にできることを 頑張ろう。 そう思って、思いっきり息を吸って、吐いた。 「じゃあ、まずは全員そろったのは 今日が初めてだから顔合わせだな。 ひとまず、先日いなかった柳原さん、 簡単に挨拶お願いします。」 そう松永さんが言った。 「柳原麗華です。よろしく。」 そうそっけなく言った柳原さんは、 ボブのショートカットに 質のよさそうなスーツをかちっと 着こなした女性だった。 「柳原さんは私も仕事で何度かお世話になっている。 英語、フランス語、オランダ語と日本語の 4カ国語が話せて、海外との交渉の経験も多い。 頼りにしてるから頼むな。」 そう松永課長がいうと、 柳原さんは、もちろんです、と答えた。 自分のしてきたことに自信を持った人の 気負いのない答え方だった。 仕事の実力で今までを乗り越えてきたという 雰囲気を感じて、素敵だなと思った。 松永課長、流石さん、五十嵐さん、柳原さん、 そして私の5人で商品開発課の フェアトレード担当として プロジェクトチームが 始まっていくんだと改めて思った。
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