第5章 始まり

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今日から商品開発課で仕事だ。 もう自分の荷物の引っ越しは済んだから、 あとは自分がその場所に行くだけだ。 新しい場所はなんだか緊張するけど、わくわくもする。 まだ、始業の30分前だけど、 今日はせっかくだから早く来てみた。 一番乗りかな・・・。 そう思いながら、エレベーターを降りて、 課の扉を目指す。 コンサルタント部は大部屋で、 その中でも端の一角が私たちのチームの居場所だ。 すると、そこに人影が見えた。 五十嵐さんかな? あともう一人は・・・ 明るめのグレーのAラインワンピースと ベージュのハイヒールのすらっとした女性だった。 なんとなく見覚えが・・・。 「ああ、吉永さん、おはよう。早いね。」 こちらに気づいた五十嵐さんに声をかけられた。 「おはようございます!」 そういうと、その女性の人も こちらを見てぺこっと頭を下げた。 あ!この人、この前休憩室で 五十嵐さんと話していた人だ。 「この子が今度この部門に来た子?」 そう言ってじっと全身を見られた。 その後、首をかしげられて 「なんか、商品開発って感じではないわよね。」 と言った。 えっ・・・・。 思わず体が固まってしまった。 「あ、悪い意味ではないんだけど、 もっと真面目な部署にいそうな感じよね。」 「吉永さん、すみません。 こいつ口のきき方がなってなくて。 椿、もっと口のきき方気をつけろよ。」 五十嵐さんがそういって、女性をこづいた。 その椿と呼ばれた女性は、 ぺろっと舌を出した。 「じゃあ、そろそろ私はお邪魔するわね。」 そういって、かつかつとハイヒールの音を 鳴らしながら去って行った。 椿さん・・・・。 流石さんみたいに大輪の花が咲く感じではなく、 一輪でも静かな存在感を放つ清廉な花を感じさせた。 「吉永さん、朝からごめんね。」 そう五十嵐さんが言った。 「いえ・・。」 「椿とは同期で、今は秘書課にいるんだけど、 この部を担当している専務の秘書だから たまにこっちに来たりするんだよね。 あの調子でよく秘書課なんていられるよなあ。」 そう苦笑しながら言った。 なんだか親しみが感じられる言い方だった。 椿って呼び捨てしてるものね。 親しいのかな、親しいんだろうな。 なんだかちょっと気になってしまう。。。
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