第5章 始まり

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「まずは、この商品開発課のフェアトレード担当の役割と言うのは かなり自由に裁量が決められている。 そのため、現状を把握して、何をどうしていくか、 その方針が大事になってくる。 この部分をまずはこのチームでじっくり共有していきたい。」 そう松永さんが言って、 1日目は現状把握とお互いの自由な意見交換で どんどん時間が過ぎていった。 就業時間に近づくころには、 頭がくらくらして、のどがからからになっていた。 「ひとまず、今日はここまでだな。 明日以降、具体的な計画に移すような議論にしていこう。 各自、企画書を出せるよう準備してくれ。」 そう松永課長は言った。 はあーっと席について思わず大きな息をついた。 すると、柳原さんは就業時間になった途端、 お疲れ様、と言い、ささっと帰って行った。 流石さんも、今日はもう議論でお腹いっぱいねーと 言って、今日はジャズダンスのレッスンがあるの、 と帰って行った。 松永課長は他部署に用事があるということで 出かけて行った。 あっという間に人がいなくなり、 私も一瞬帰ろうかと思ったけど、 今日の議論を整理したいと思って、 パソコンを立ち上げた。 「吉永さん、まだやっていくの?」 そう五十嵐さんに聞かれた。 「はい。少しだけ。」 「初日から無理しないでね。」 そう言って五十嵐さんもさっと帰った。 その後ろ姿を見ていると、 反対方向から歩いてくる人の姿が見えた。 あ、椿さん・・・。 朝も来たけど、また夕方も来るなんて。 もしかしたら、二人は付き合っているのかな・・・。 椿さんは五十嵐さんにほほ笑みながら 声をかけて、親しそうに話していた。 椿さんはこちらをちらっと見ると、 少しすねたような顔をして、五十嵐さんに 何か言っていた。 その後は、二人でエレベーターの方向に向かった。 確かに二人はお似合いだ。 才色兼備な秘書課にぴったりな椿さんと 仕事がバリバリできる五十嵐さんは、 部署的にも見た目的にも素敵なカップルに見えた。 その後、はっとしたが、 もし五十嵐さんに彼女がいたら、 私の行動は大丈夫なんだろうか? 普通に考えて、 彼氏が女性を家に泊めていたというのは まずいんじゃないかな、と思った。 ど、どうしよう・・・。 今更ながらそわそわした気分になっていった。
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