彗星ミクロマイト

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 私の住んでいる「フタツワ市」には、昔から特別治安維持という名目の「殺し屋の運用」が容認されている。殺害を要求する相手を申請し、市政局のいくえもの厳重な審査を通過し、市長の朱印をもってして殺害が許可される。  厳密なシステムとして説明するなら、「殺害しても罪に問われない人物」と認定される、要は、人権をはく奪するということだ。  まずこの審査の時点で99パーセント以上の申請が却下される。  市政として「この街に有益かどうか」を基準としているため、私怨での殺害申請など、場合によっては業務執行妨害で弾圧されかねない。  不正な金の取引の総締めや、何人もの子供を誘拐している犯罪者などの何かしらの箔を持っていることが条件だ。  そして、市長の朱印を捺印されるのも1パーセントの中の一つまみで、更に仕事を請け負ってくれる「殺し屋」も決まらなければ当然却下されてしまう。  つまるところ、天地がひっくり返るような必要性がない限りは受理されないほどに厳しい条件なのである。 「はい。国家臭い発泡酒」 「皮肉割引は有効?」  店の奥から戻ってきたピムが、もはやコップに注ぐのも億劫になったのか缶に入れたまま同じ品をカウンターの上に置いた。これ飲んだら帰りな、といわんばかりの乱雑な商品の仕出しだった。 「で、今日の仕事はどうするつもりなの?」 「いや、今日はもう有給とってあるよ」
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