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その日、俺は気がついたらグチャグチャで真っ赤な物体を凝視していた。酷く慌てたその物体に近寄り、そして男は自分の口から液体のようなドロッとした物を吐き散らす。
状況が把握できず周りを見渡すと、まぁこれまたきれいな赤でフロントガラスを彩った前衛的とも言うべきトラックが止まっている。
「あのトラック・・・前見えんのか?」
と、言った後に視界の端に映ったものが俺は見当違いな事を言ったのだと自覚させる。人間の頭部だ。生首だ。顔面だ。しかし、生首が目の前に在る程度大した事では(まぁ、普通目の前に生首が在ったら十分に大したことだと思うけど)ないのだ。
その生首が蓬坂 莱(ホウサカ ライ)の、詰まるところ俺の顔をしているのだ。これには16年の人生を積んできた俺もさすがに唖然とする。そして、自分は今一体どうなっているのだと思い、腕を顔の前に持ってくると。
「・・・まだまだ俺も青いねぇ~」
自分の体が青一色の輪郭だけになっていた。少し言葉に詰まったが、冗談を飛ばせるこの冷静さは賞賛されてもいいと思いつつ、考え込む。
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