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「ねぇ」
辺りを見回しても誰も居ない。
「ねぇ、聞こえてる?僕だよ。」
「…え?誰?」
空耳かと思いきや、更にハッキリと聞こえた声に、咄嗟に返事をしてしまった。
「お願い、聞いて!」
ーーゴトン、ゴトンーー
電車の近づく音だ。
「駄目!乗っちゃ駄目!」
鬼気迫る警告と共に、何故か金縛りの様に体の自由が奪われた。
「あの電車は、この先の踏切で車と接触し脱線する。僕は約束したから。君を守るって!」
「…ぅう…」
その懐かしく温かい声が、誰のものかに気付いて涙が溢れ出る。
『僕がずっと守ってあげるからね!』
いつも近くで守ってくれていた幼馴染み。
不慮の事故で突然逝ってしまった…。
「有難う。今でも私のこと守ってくれていたんだね」
「約束守れて良かった…」
幼いらままの彼が、私の前に現れ優しく微笑む。
ーーそして、消えてしまったーー
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