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扉の先には、渦巻くような深い闇が広がっていた。
「この先は、メインストーリーのどの辺りに繋がっているんだ?」
俺がそう訊くと、かぐや姫は力のない様子で首を横に振った。
「私たちもこの扉からはメインストーリーに入ったことがないんです。従業員専用だけが通れる別のルートがあったので。でも、点検のために一人だけこの扉を通った者を見たことがあります」
「誰ー?」
美沙が訊くと、かぐや姫は扉を見ながら名前を口にした。
「世界の王補佐、リーダーのイエスです」
「イエス……?」
俺は、ピノキオクエストで出会ったマイケルの事を思い出した。
過去が映し出される場所では、マイケルはイエスだったことがわかり、優くんとも繋がっていた。
世界の王補佐のリーダー。
さらにかぐや姫は話し続ける。
「イエスはブラックアウトのほとんどの実権を握っている人物です。そして、運営委員会の中では最も実力があると言われています。私からはこれが語れることの精一杯です」
扉から視線を逸らすかぐや姫。
その姿は、何だか怯えているような気さえした。
いや、気のせいじゃないだろう。
「大丈夫だ。ありがとう」
俺はそう言うと、足を踏み出して扉の前に立った。
「俺が先に行く」
そうだ。
忘れるな。
俺はハルカのリーダーだ。
「先に行く」
それだけ口にすると、俺は闇の中へ飛び込んだ。
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