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冷静になれ。
戦闘で冷静さを欠けば、一番の命取りになる。
吹き飛んだ腕は、呆気なく地面に落下して転がった。
右の肩の付け根から真っ赤な液体が噴水のように噴き出すが、俺は即座に能力を発動させ、傷口を凍らせて止血を行った。
「ちっ」
右腕はしょうがねえ。
問題は体内エネルギーの方だ。
重大な怪我は、身体に負担をかけるため一気に体内エネルギーを失うことになる。
「今の攻撃を受けて、そこまでの怪我におさえたのは賞賛すべきポイントだ。さすがトップクラスのプレイヤーだな。やりがいがありそうじゃ」
年老いた力の弱い声の主。
俺は、改めて声がした方へ視線を向けた。
そこには、見覚えのない老人が一人立っていた。
ただし、背筋が綺麗に伸びている分、声の印象とは裏腹に見た目の年齢はそれほど高くないように感じた。
「誰だよ。お前」
殺気を放ちながら、相手の出方を窺う。
「わしか? わしは王龍じゃ」
「王龍?」
名前は知っているような気はするが、どこで聞いたのか思い出せねえ。
「ずっと山の上に住んでいたんだがな。ちょっと前からメインストーリーに戻ってきたんじゃよ」
この場の雰囲気にそぐわない笑顔を老人は浮かべた。
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