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つうーか、こいつはどっから現れたんだ?
少なくとも、さっきまではこの層にいなかったはず。
「そうじゃな。確かにいなかった」
俺はハッとして、思わず身構えた。
今、無意識のうちに声を出したか?
「いや、お主は声を出しておらん。わしが心の声を聞いたんじゃ」
「心の声を?」
「うむ。わしの自慢の能力の一つじゃな。自然と聞こえちまうものだから、ある日、嫌になってな。それで山に籠もることにしたんじゃ。ちょうど門番となったのはその時ぐらいからだな」
薄気味悪い野郎だ。
この声も聞いているわけか。
「老いぼれのクソジジイに、よく門番が務まったな」
「おい。口には気をつけろ。わしはこう見えてもまだ128歳じゃ。延命治療は行っておらんぞ」
「128!?」
俺は驚きを隠せなかった。
どう見ても、普通の人間じゃねえだろ。
運営委員会が作ったコンピュータキャラか?
「本当に失礼な奴じゃな。わしは人間じゃ。若さを保てるのもわしの自慢の能力の一つでな。ところで何の門番をしていたか気になるだろ?」
その言葉に、俺の心は無意識のうちに回答を出していた。
老人は再び和やかな笑顔を浮かべながら口を開いた。
「質問をされると、人間は無意識のうちに心の中で答えてしまう。これは防げない攻撃なのじゃ。よかろう。答えてやろう」
老人の自慢気な顔に、俺は苛立ちを隠せなかった。
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