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闇の中は、一筋の明かりさえもない本当の闇だった。
足の踏み場はなく、身体が落下していることがわかる。
顔を下に向けても、どこまで闇が続いているのかすらわからない。
全身が風を感じていることだけは確かだ。
落ちている感覚だけは間違いなさそうだ。
闇に包まれて状況が全くわかならないのに、心はそれほど慌てていなかった。
光刀!
闇の中で、こんなに頼りになるパートナーはいない。
俺は光刀の柄を握り、ゆっくりと鞘から抜こうとした。
『待て』
そう言われて、俺は鞘から抜く手を止めて下を見た。
いつまでも続くかと思われた深い闇の奥に、小さな明かりが浮かぶように映し出された。
落下するごとに比例して、身体はあっという間に光に近づき、どんどん大きくなるような感覚に陥る。
あまりに眩しさに手で光を遮ると、気が付けば落下が止まっていた。
着地した……?
いや、そんな感触はなかった。
だいたい、これだけ落ちれば相当な衝撃のはず。
『いや、もう落下はしていない』
俺はゆっくりと辺りを見回した。
すると、光が解き放たれるかのように段々と周囲の光景が映し出される。
ここがメインストーリー?
はっきりと見えてきた光景に、戸惑いを隠せなかった。
360度。どこを見渡しても、美しい花々が咲いている。
俺は広大な花畑の中心に立っていた。
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