6人が本棚に入れています
本棚に追加
「や...誰のとかじゃなく、私、通りすがりの者でして」
「あ、もしかして看板見てきたの?」
「そうです...」
「なるほどね」
彼は、ふわっと微笑み、嬉しそうにうなづいた。
「あれ、俺が作ったんだよ。もうすぐブランド立ち上げるからさ。ちょっと地味かなって心配だったけど、あんたに見つけてもらえてよかった」
そう言って、無邪気な少年のように足取り軽く、私に近づいてきた。
「一人目のお客様。アンベリールへようこそ」
そう言って、スっと膝まづいた。
「え、え...」
「なんだよ、喜べよ。記念すべき一人目なのにさ」
戸惑う私に、彼は笑いながら言った。
その様子を見て、私は肩に力が抜けた気がした。
「これ、あなたが作ったの?」
「ワンピース?」
「はい」
ワンピースを指差すと、彼はうなづいた。
「俺はデザイン担当だからね。俺が作ったようなもんだな。でもこれほかのメンバーに聞かれたら殺されちまうかな」
クククと笑いながら、彼はワンピースの裾を手にとった。
「着てみる?」
「い!いえ!遠慮します!」
最初のコメントを投稿しよう!