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「ハルさん」
「あれ、俺名前教えたっけ?」
「昨日呼ばれてたから。ほら、ほかの部屋の中から、男の人の声で。ハルって呼ばれて出てきたでしょ?」
首をかしげる彼に、私は慌てて説明した。
「そっか。そうだよね」
彼はまた、髪の毛をクシャリと掻いて、フワリと笑った。
猫毛のようにふわふわな黒髪が揺れている。。
(この人の空気感、好きだな)
柔らかくて不思議で甘くて、少しだけ危険な未知の香り。
目を合わせていると、自分がどんどん彼の世界に吸い込まれていきそうになる。
「なんで、ここにいんの?」
「職場がこの近くなんです。styleっていう雑誌の」
「まじかよ」
彼はとても驚いたような顔をした。
「どうかしましたか?」
「それがさぁ」
肩に掛かっている紙袋を地面に下ろして、中を開いて見せた。
ちょいちょい、と手招きをされ、わたしは紙袋の中身を覗き込んだ。
「これ見て」
「あ、昨日のワンピース。売り込みですか?」
「そうそう。今ね、これ持ってstyle編集部まで行ってきたわけですよ」
「...どうだったの?」
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