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「可愛い...」
その言葉しか、思い浮かばなかった。
真っ黒なマネキンに着せられた、真っ白なワンピース。
ウエストのくっきりとしたタイトな形をベースとし、ふんわりとしたチュール素材が重ね付けられたトップ。
いたるところに小さなパールのビールに、細めのリボン。
派手ではないけれど、一瞬で目を引く。
女の子が欲しがる可愛さを惜しみなく、絶妙なバランスで取り入れてある。
他の店では見たことがないデザイン、でもパーティー用だけじゃなく普段着にも使える、素敵な一着だった。
しばらく見とれていると、扉のうちのひとつから、ガタガタと音がした。
ビクっとカラダを縮ませて、私は息をひそめた。
(やっぱり!誰かいるんだ!てゆーか私、勝手に入っちゃって...どうかしてる...)
バレないうちにこっそりアトリエを出ようと思ったその時、物音がした扉の向こう側から、声がした。
「ハルー!」
ドキリとした。
(なんで私の名前を?)
息を殺して、声がしてきた扉をじっと見つめることしかできなかった。
(しかも、勝手に入ったこと、バレてる...?)
「ちょっとこっち手伝って!ヤバイってマジで!」
切羽詰った声が、また聞こえた。
「おい、ハル、仕事場にいるんだろ!?」
今度はしびれを切らしたような、苛立つ声。
私、呼ばれてるの?
手伝えってこと?
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