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運命を紡ぐ、淡い歌
遥か彼方の想いを乗せて
泡沫の様に切なく、甘い
静かな日常を乱す歯車
高校生になった春、私は不思議な出会いを経験する。
それは入学式から1週間が経ち、部活動の勧誘が盛んに行われていた、涼しげな春の日のことだった。
_____________
大きな窓から流れ込む太陽の光を受けながら、静かにiPodから流れてくる音楽を聞く。
ひと気の無いこの時間帯が好きで、私はいつも少し早起きをして、教室で音楽を聞いていた。
このSHR前の僅かな時間が、何気ない至福のひと時。
前方から視線を感じて静かに顔をあげると、友達のななせと目が合った
この時間にななせがいるなんて、珍しいこともあるものだ。
ななせは、この学校に入学して初めて話した人であり、気の合う友人の1人でもあった。
簡単に言えば素直で良い子。見てて微笑ましいのと同時に、いい奴過ぎて逆に不安になる。
「おはよ、ななせ。こんな時間に珍しいね」
「気分よ、気分!今日は早起きの気分だったの」
ななせが笑いながら、自分の席に鞄を置いた。
「そう言えばちはる、あの人知り合い?なんかちはるのこと呼んでほしいって、頼まれたんだけど」
「......え?」
何のことかよく分からず、教室のドアの方を見る。
そこには確かに男の子がいて、何も言わずに此方を見つめていた。
なんだろう。あんな人、初めて見るけど
「......誰?」
「うーん。ネクタイの色が赤いから、多分2年生だと思うけど......待たせるのも悪いし、行ってきたら?」
「......そうだね、ちょっと行ってくるね」
「はぁーい」
ななせは軽く返事をして、そのまま席についた。
お弁当箱を広げようとしてるのは、見なかった事にしよう。
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