西崎部長と元部下の告白

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 確かに、どうして後輩の名前を拝借したいのか解らないな。  そろそろ新幹線の時間だと言う清隆と藤堂が、明菜と婿殿に挨拶をした。二人を見送るべく俺達も病院を後にする。  車で駅に着くと早希子は余程離れ難いのか、駅ビルの中まで、コンコースまで、とどんどん入り込んで、最終的には新幹線のホームで息子とその恋人を見送る事となった。 「藤堂さん、今度はゆっくりしていってね」  一緒の息子には声も掛けずに、藤堂だけに名残惜しそうにする早希子を見て、さすがに俺と清隆は呆れてしまう。  ホームに入ってきた新幹線に二人が乗り込んでも、それが走り去って見えなくなっても、早希子はまるで遠距離恋愛の恋人を見送るヒロインのようにホームに立っていた。  まるで一時期流行った、シンデレラ何とかっていうコマーシャルみたいだ。 「早希子」  声を掛けると、はっと早希子は我に帰り、そして俺の顔を見た。 「すまないがこれから行くところがあるんだ。先に車で帰ってくれるか?」 「……分かったわ。今日は夕飯は?」 「うん……。帰りはよく分からないから夕飯は要らないよ」  あら、そう、と言うと我が妻がニンマリと笑う。 「どうした?」 「あのね、あなたが遅く帰るのなら、お友達を家に呼ぼうかなって」 「友達ってヤマアラシの追っかけ仲間か?」  もう、俺には隠す気は無いのか、早希子は、んふふふっ、とさらに笑って自分のスマホの画面を俺に見せた。 「おい、これは……」  いつの間に撮ったのか、画面には藤堂に顔を寄せて満面の笑みを浮かべる二人のツーショットが撮し出されている。 「お前、まさかこれを追っかけ仲間に見せるんじゃないだろうな?」 「あら。タクミくんは良いって言ってくれたわよ。お母さんが喜んでくれるなら、どうぞって」  藤堂、よかったな。取り敢えず嫁姑問題は無さそうだ。  それにさっきまで藤堂さんだったのに、もう、タクミくん呼ばわりだ。夫として、あまりそれを他人に見せびらかさないように、と妻に釘を刺すと俺は早希子と別れて在来線乗り場に向かった。  いつもの通勤とは逆方向の電車に乗って、送られてきた住所に近い駅に降りる。ここら辺は馴染みが無いな、と思いつつスマホに表示した地図を頼りに目的地へ向かう。
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