うさぎ

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「……大丈夫?」 「だ、大丈夫じゃないです」 取り繕う暇もなく、そう宣言してしまった。 大丈夫じゃない。 全然……大丈夫じゃ、ない……。 うまく喋れないのは、いつもの喉のせいではない。 痺れた唇をうまく動かせずに、ただ息を荒げて、力なく首を振った。 「ようやく言ったな」 余裕の笑みが憎らしい。 今まで見たどんな笑顔よりも綺麗に笑ってから、先生は更に弧を深めた。 「今言わなくてもいいんだけど」 「……ッ」
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