うさぎ

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悲鳴の逆のように、鋭く息を吸い込んだ。 いつの間にか完全な捕食者になってしまった先生は、獰猛な色気を漂わせた声を直接耳に吹き込むと、その周囲を丹念になぶったのだ。 愚かな獲物は、逃げることも挑むこともできずに、目の前のたった一人に追いすがるしかない。 「せ……せんせ……」 促されたときのまま、私は従順に先生の両肩に手を載せ、ピクリとも動けずにいる。 「私……どうしたらいいのか分かりません」 もう遠慮もないのか、大きな手のひらで私の顎から頬を簡単に持ち上げた先生は、意外にも笑うことはなかった。
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