うさぎ

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寝転がったまま床に手を伸ばす。 真ん丸のそれは、先生にあげた私の作ったマスコットだった。 ボールペンもついたままだ。 まだ、持っていてくれたのだ。 医院に置いてあったのを一度見たきりなくなっていたから、とうに捨てられたか、なくしたものだと思っていた。 今度は転がさないように、少し背を起こして、それをテーブルの上に戻そうとする。 小さなテーブルには、私と先生のスマホと、小さなデジタル時計、それから、幼い私が渡した下手くそなフェルトの人形も置いてあった。 なんで、こんな……。 こんなものをいつまでも取っておいてくれるのだろう。 こんなふうに、さも大切なもののように、枕元に置いていてくれるのだろう。
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