うさぎ

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「……でも、あなたを前にすると。細くて小さいし、体も心も弱そうだし、現に苦しそうにしてるし、俺が守らなきゃって思うんだけど、でも。望君が羨ましかった。兎川先生が羨ましかった。……あなたに、甘えたかったんだ」 振り向かせては、もらえなかった。 泣きそうなほど小さく優しい声が続く。 「俺の手で、あなたを楽にしてあげたいなんて思い上がりながらも、あなたに助けてほしかった。子どもの頃、泣きながらあなたにありがとうって言われたときみたいに、あなたに頼られることで……甘えたかったんだ」 握り締められた手に、柔らかく口付けられた。 それが数度続いて、先生はようやく私を振り向かせてくれた。 まともに顔を合わせる間もなく、今度は唇が合わさる。
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