うさぎ

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「先生……私……」 ずっと、しっかりしなきゃと思ってた。 生まれたときから両親は共働きで、父方の祖母は他界しており、祖父も物心つく前に亡くなった。 弟が生まれて嬉しかったけれど、母はまたすぐ働きに出た。 私が小学校に入る頃になると、望は度々入院するようになり、よっちゃんに会うことは増えたものの、両親はさらに多忙さを増した。 そんな両親に代わって、洗濯物を畳み、掃除機をかけるようになり、最終的には家事の大半を担うことになった。 学校の先生に褒められても、友達と喧嘩しても、家に帰ったら誰もいなかったけれど、家族の役立てることが嬉しかった。 その代わり、私は涙をなくした。 泣いても、何も変わらなかったから。 誰かが気づいてくれるわけでも、傍にいてくれるわけでも、慰めてくれるわけでもなかったから。
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