うさぎ

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強さから生まれたわけではない歪な意地は、望やよっちゃんに表面的には依存しながらも、根っこのところでは頼らせてくれなかった。 本当の弱さは、誰にも見せちゃいけないものだと思っていたから。 「先生、私ね……怖いものがたくさんあるんです」 本当は、とても怖がりだった。 とても……とても弱かった。 「一人の家が怖い。待つことが怖い。日常が壊れることが怖い。声が出なくなった過去も怖い。人の負担になることも怖いし、自分の思っていることを言うのも怖い。雪も怖ければ、雨だって嫌いです」 恐怖は恐怖を呼ぶばかりで、どうしたって救いが見えなかった。 一人じゃ到底いられずに、それでもどうしていいか分からず、いつも震えていた。
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