うさぎ

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「雪で、電車の音が吸収されていただけでしょう」 信じられない。 呆気に取られた私に、先生は頭を下げる。 「申し訳ない」 「……もういいですけど」 高い背を折り曲げられると、どうにも分が悪い。 目の前に来た黒髪をそっと撫でると、そのまま首筋に擦り寄られた。 甘えたがりだ。 自分で宣言したとおり、本当にそうなのだろうか。 子どもの頃から、あまり人に、家族にも甘えられなかったのかもしれない。 それが容易に推察できる環境だったと知っているから、邪険にする気は起きようもない。
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