はる

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「ふうちゃん、知らなかったの?」 「え、よっちゃんは知ってるの?」 よっちゃんも、私と並んで手すりに凭れた。 父より少し高い背で、父より少し肩幅が狭くて、父より少し明るい髪の色をしている。 「芙紗子の芙は、蓮のことだよ。泥水から顔を出して、清く美しく咲いてほしいってことだ」 俯いてばかりではいけない。 そう叱咤された気がした。 辛く苦しいことばかりが目につくけれど、きっと顔を上げれば青空が広がっているのだ。 雲の上は、いつだって青い宇宙だ。
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