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きっと私たちは、似た者同士なのだ。
抱えきれない孤独に怯えながら、それでも誰かに手を伸ばしたいと思っている。
自分のこの小さな手で何かが、できれば他の人の抱えきれないものをすくえないかと願っている。
けれど、真っ直ぐに手を伸ばす勇気さえなく、あたふたと狼狽えながら、それでも諦めきれずに、おずおずと手を伸ばしたり引っ込めたりを繰り返している。
「お腹空きましたね」
「空いたね」
雲が翳って、月も、いくつか見えていた星も隠れてしまった。
でも、その光が消えたわけじゃないことを私たちは知っている。
強く掴むようにしていた指が剥がれ、指と指を絡ませるようにそっと握り締められた。
朧月のように柔らかな温もりが、確かに伝わり合った。
- おわり -
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