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「あなたが私のマイストですか?」
「んぁー? そうそう、今日から俺上司になるんだった。あーでも、ペアが女の子とは聞いてなかったなぁ」
「ええっと……」
困惑、その一言だ。だってこの人、部下が挨拶に来たってのに寝っ転がって本読んでるのよ? あの堅っ苦しくて真面目な印象が一番の我らガーディアン・フォースに、こんな人がいていいの?
しかもここ、草原よ!?
周りの同期はみんな支部やら本社やら、せめてでも訓練場とかに出向いてるのに、どうして私だけこんな何もない草原に呼び出されなきゃいけないのよ。
私の怒りは多分、隠せていなかっただろうし隠す気なんてさらさらなかった。
「あ、俺上下関係とかそーゆー小難しいこと気にすんの面倒だからタメでいいよー。俺はアオトね。君は?」
「クレハです。今日はもう帰っていいですか? 私訓練するので」
「あーまってまってクレハちゃん。もうすぐ帰ってくるから。紹介しなくちゃねーうちのかわい子ちゃん」
なんの話だ。私は怪訝な態度で、しかし仮にも上司に呼び止められたのだから無下に断る訳にもいかず、しぶしぶそこに留まることにした。
「クレハちゃんも可愛いよね。君みたいな子がガーディアン・フォースに入るなんて驚きだよ。男ばっかでいろいろ大変でしょう」
「私たち戦闘職に女性は少ないですが、支援職には結構います。それに、男性に負けないくらい鍛えてますから」
「あー、新人でかなり優秀なんだってね。俺にペアができるって聞いた時そんなことも言われなぁ。いや、驚いたね」
へらへらと笑いながら空を見つめる上司仮を見て、私は心の中でため息をついた。恨んでやる。この人と私を組ませた本部の人事を恨んでやる。だいたい、こんな適当な人と任務をこなしていけるのだろうか。
「クレハちゃんは」
「クレハでいいです」
「クレハは何を武器にしてるんだい」
私は無言で得物を見せた。見る人が見ればただの棒。しかし、私の手にかかれば立派な武器となる。
「棍かい、この辺りで使い手がいるとはなぁ」
「気を混ぜて振るうんです。私にしか扱えません」
「誇りなんだねー。いいよいいよ、そういうの。お、俺の誇りも丁度戻ってきた」
子どものように純粋な笑みで起き上がると、大空に向かって手を伸ばした。その時、天から独特の鳴き声が聞こえてくる。
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