1-伝えたくない

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「まさか、ドラゴン?」 「そ、俺のドラゴン。ジェシカって言うんだ。可愛い可愛い女の子」  青空から白い点のようなものが降ってきた。やがて点は輪郭を持ち私たちに近づいてくる。 「お帰りジェシカ。今日の散歩はどうだった?」  キアーー!  ジェシカと呼ばれた白竜は翼をはためかせて喜びをあらわにした。 「悪かったね、クレハ。今日この時間はジェシカのお散歩タイムだったからどうしてもここに来てもらう必要があったんだ」  あ、多少はこんな場所に呼び出したこと気にしてたんだ。だからと言って、まずこんなところで竜を放していること自体問題である。 「随分と仲がいいんですね。しかも自尊心が強く気高いあの白竜がこんなに懐くなんて」 「ジェシカは良い子だよ。クレハのことも気にいったみたいだ」 「まさか、冗談を。まだ会って間もないのに?」 「だってほら」  白竜ジェシカは私の方をじっと見つめると、奇声とともに再び翼をはためかせる。 「ジェシカは人を見る目があるんだよなー。クレハは怖い顔だけど可愛くて素敵な女の子ね、だってさ」 「や、やめてください。そんなわけないじゃないですか!」 「あら照れてるの、初々しいわねぇ」 「いい加減怒りますよ!」  最悪な挨拶だった。ジェシカは確かに綺麗な竜で同期にも自慢できるけど、あのアオトとかいうクズ上司が操るのかと思うともう何も言えなくなる。  なぜ私があいつと組まなきゃいけないんだ。ペアを作ること自体は仕事の特性上仕方のないことだから良いとしよう。だけど、あんなやつと組むなんて聞いてないぞ。  私の仕事は、賊から街を守り災害時には救助へ向かうガーディアン・フォース。その仲でも特異性と専門性が問われる戦闘職、ドラゴン・バトラーだ。通称DBと言われている。DBは自らドラゴンを操ることはない。戦闘に集中するため、そして、ドラゴンを操れるのは天性の才を備えたものだけだから。  アオトはDBを乗せてドラゴンを操る支援職、ドラゴン・ディーバー。通称DDだ。  基本的に新人DBは訓練を終えると、指導員となるDDとペアを組み任務へ向かう。逆に新人DDにはDBの指導員がつく。ペアを組む職業なので、自然と同職種ではなくペア職種が指導員となるのだ。だから私がDDのアオトと組むのは間違ってはいないのだが、このペア組みはやはり間違っている。
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