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そうは思っていても、新人が人事に口出しできるはずもなく、嫌々アオトと任務やら訓練やらをこなす内、それなりにこの適当な男とも話しができるようになってきた。それに、新人が指導員と組むのは一年だけだ。一年経てば同期か年の近い同実力者と改めて組み直すはずだ。
「ジェシカ、今日も良い飛びっぷりだったわね! 最高よ」
「だろー、俺のジェシカは世界一のりゅ」
「ジェシカー、可愛いよジェシカー。なんか後ろの男がうるさいけど私はジェシカがいるからやってけるよー」
「おいおいクレハさん、仮にも上司に向かってその言い方は」
「えー、アオトが上下関係は無しねって言ったんじゃない。ですよねジェシカちゃん」
キアーー! クゥクァー!
「あ、ちょっと。そんなに舞い上がらないで」
ジェシカは可愛くて愛らしい。そこは認めよう。私もこの子と離れるのは少し寂しいよ。まさかこんなに竜が私に懐くなんてね。
なんだかだんだん、竜の扱いにも慣れてきた気がする。
「クレハとジェシカはもうすっかり友達だな」
アオトはしみじみと呟いた。
キエーー!
ジェシカはアオトの言葉に応じて翼を広げた。
「あーこらこら、やっとなだめたとこなのにってこれ本当はアオトの仕事だよ」
「良いじゃないか、ジェシカはクレハと触れ合えて嬉しいんだよ。顔合わせの時から好かれてたけど、仲良くなれてよかったよ」
「まぁ、最初は背中に乗って飛ぶの少し怖かったけど、私もジェシカなら信じられるようになったし。今なら目一杯動けるよ!」
「ま、俺の竜使いは一流だからな」
「ジェシカのお陰よねー」
キアーキーー!
本当はちゃんと分かっていた。数回の訓練と実践で、アオトの技術の高さは十分に理解できた。
だから少し、不思議ではある。こんなにも竜との信頼関係が厚く、ぶれの少ない飛行ができるのはDDの中でもそう多くないはずだ。まだ若いとはいえ、これほどの実力がありながら新人の指導員を任されるなんて。本来なら、正式なペアを組んで高難度の任務に派遣されてもおかしくない。
どうして私とペアを組むことになったのだろうか。
その日も相変わらず草原でジェシカの帰りを待ちながら、私は棍を振るいアオトは本を読んでいた。すると、アオトは急に何かを思い出したのか、声を上げる。
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