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「クレハー」
「なに」
「相変わらずご機嫌斜めね」
私はその皮肉に対し真っ向から突っかかる。
「そりゃそうよ。アオトが真面目に仕事しないから、本部に出す書類やら訓練場使用の申請手続きやらは全て私が処理してるんだよ? これ明らかに新人の仕事じゃないよね」
「いやー、クレハの方が物知りだししっかりしてるから、俺がやるより安心安全ってねー」
この上司、やっぱり上司らしからぬ。竜に乗ってる時はまだまともに思えるのに、地に足つけた途端これなんだから。感性のみで生きてるんじゃないかしら。
けどこんなでも一応私の直属の上司な訳ですから、ほっとくわけにもいかないのよね。この人とペアを組む人は苦労するわ。ちょっと目を離すと違反すれすれの行為もやりかねないし。ガーディアン・フォースの特権で竜を連れて歩くことは許されてるけど、放して飛ばすには許可がいるって知ってるのかしら。
「言っておくけど、訓練期間に座学でみっちり勉強したはずだよ。私が物知りなのではなく、アオトが知らなさすぎるの」
「いやはや、頭を使うのは苦手で」
確信。やっぱりこの人感性で生きてる。
「しっかりしてよね、もう。仮にも私の上司でしょうが」
「だからー、クレハが危険な時はちゃーんと守るから」
「私、竜の扱い方以外でアオトに習ったことなにもないんだけど」
「大切なことを教えてるからいーの。だいたいクレハに教えることなんて最初からなかったもんな。竜の上での戦い方なんて言葉で教えられるものじゃないし」
「それはそうだけど」
空での戦い方は身体で覚えるしかない。それは訓練生時代から聞いていた話だ。にしても安定した乗り方とか他にも指導することはあるでしょうに、この人全て感覚任せだよ? 細かい作業とか事務的な仕事については最初から期待していなかったけどね。むしろ全て任されるなんて、ある意味で裏切られたわ。竜の扱い方に関してはDBの私は知らなくても良いことだし。ジェシカと触れ合いたいから別に良いんだけど。
「あ、そうそう。本題を忘れてたよ」
「本題?」
珍しく本を閉じて私の方を見ると、にへらと笑って言葉を続けた。
「今度の休み、西の岩山に行こう。ジェシカと、俺と、クレハで!」
多分私、今すごく微妙な顔してる。それを見てか、アオトはのんびり付け加えた。
「ジェシカのお願いなんだ。しばらく行ってないから久しぶりに見たいってさ」
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