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「そう、ジェシカが言うなら仕方ないわね」
結局、特に用があるわけでもないのに岩山へ行くことになった。
ま、あそこは訓練や任務で何かと訪れる機会の多い私たちが休日にわざわざ出向くような場所ではないけど、一応観光地にもなってるくらいだし、何よりジェシカのお願いだから良いけどさ。お散歩が目的なら棍でも持って行こうかな。
西の岩山。
そこは街外れにある草木の生えない、岩が剥き出しになった場所。一面石や岩だらけで、一部が盛り上がっているため山と形容されているが、西の岩山と言った時は大抵そこら一帯のことを指す。
まさに訓練にはもって来いの場所だ。組手をして周りのものを壊してしまっても、どうせ石や岩しかない。人気の少ない場所へ行けばドラゴンで自由に飛び回ることだってできる。まだ飛行が不安定なDDはよくここで練習するそうだ。
また、緑豊かな街中の人々にとって、この岩山は相当に珍しいものらしく、一部は観光地化されていた。ほとんどの場所は岩が落ちてくる危険性があり一般人では近寄れないが、安定した場所のみある程度整備して一般人でも踏み込めるようにしているのだ。
もちろん私たちは人気のない場所を勇んで探した。
休日、ジェシカを先頭に常人では通れないような道をずんずんと進んでいく私たち。アオトは本を、私は棍を片手に、とジェシカをお散歩へ連れていく時と同じ装備だ。今日はガーディアン・フォースの制服も着ていないし、周りからはどのように写っているのだろうか。
いや、ドラゴンを普通に連れ歩いてる時点でガーディアン・フォースと判断されていてもおかしくないか。
「アオトはさ、いっつもなに読んでるの」
「おっ、クレハが俺に興味を示すなんて珍しいなぁ。今日は空からや」
「別にそこまで知りたかったわけではないし言いたくないならいいけど」
「悪い悪い、冗談だって。これは、なんとなんとーー純愛物語なのです!」
「ふーん」
「うわぁ興味なさげ」
興味がないわけではない。けど、素直に乗ってやる気にはなれなかった。だって、私たちは常にこんな感じだから。たまに年上かどうかも怪しいと感じる。
敬意はない。けど、ペアとして信頼はしている。
それくらいが丁度良くて、心地いいのだろう。お互いに。
変な上下の遠慮や驕りがないのは、当初は違和感でしかなかったが、共に戦うことを考えればそれはそれで良かったのだろう。
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