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龍一は、
「お前が必ず俺の元に帰ると約束してくれたから、他の人間にも、そういう相手がいるのかと想像したんだ。だから殺さなかった。美百合、褒めてくれ」
おつかいが上手に出来たから褒めてくれのノリだが、内容はとんでもないことを言っている。
めちゃくちゃ恐ろしい。
だが龍一は甘えるネコのように、その茶色い頭を美百合の方に向けて傾けている。
美百合は多分、
『龍一の冗談、相変わらず笑えないわぁ』
とでも思っているのだろう。
頬をふてくされさせたまま、
「ハイハイ」
なんて投げやりに言って、それでも腕を伸ばして背伸びをし、有坂龍一の頭を、
『イイコ、イイコ』
と撫でてやっていた。
「!」
この天変地異を誰に知らせたらいい?
桜庭か?
それとも、バカ皆人か?
いやしかし……。
谷口は考える。
『いま余計なことをすれば、またしばらく家に帰れねーな』
だから、
『こんなはた迷惑な夫婦、誰も理解してやる必要なんかねーわなぁ』
と思いながら、固く口をつぐむことにする。
Fin
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