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まるで美百合が起きるのを待っていたかのように、部屋の扉がガタガタと音をたてて開く。
そこには着物姿の初老で痩せた女が立っていた。
女は足袋を滑らせて部屋の中に入ってくると、板の間にきっちりと膝をついて、
「お目覚めでございますか美百合さま。ご気分はいかがでしょうか」
丁寧な口調で尋ねた。
美百合は戸惑う。
「気分? 気分って私……」
自分がどこにいるのか、今どういう状況なのか皆目わからないのだ。
すると女は怪訝に首を傾げる。
「お熱のせいで、少々混乱なさっているようですね」
「熱?」
「ええ、美百合さまはこの島へ向かうフェリーの中で体調を崩されました。当初は船酔いだとおっしゃられていたのですが、その後、発熱されまして……」
美百合はゆっくりと思い出す。
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