7 ガーベラ(謎のような美しさ)

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「……有坂、君の迎えというのは、もしかしてアレか?」 勘弁してくれと尋ねる桜庭だが、龍一はおかしそうに警備員に囲まれる谷口を眺めているだけだ。 側に近づいて行かないところを見ると、まだ誰か待っているのか? すると、 「龍一っ、ちょっと龍一はどこよっ!」 甲高い女性の声。 間違いない、こちらだ……。 一声で桜庭が悟ったその声の主は、櫛を通しただけの黒髪、丸い目にぷっくりした頬。 背の低い……、有坂美百合。 そして、よりにも寄って、美百合はこの場所で、国賓の歓迎晩餐会の会場で、緑のジャージ姿だった。  ……一体どうやって、ここまで入って来られたのか。 多分、谷口陸朗が警察手帳の身分を駆使してやって来たには違いないが、この場合、誰が始末書を書くハメになる? 一体、何枚、書けばいいのだ? 桜庭は、目の前が真っ暗になる気がした。 しかしそんな絶望を味わっていたのは、どうやら桜庭ひとりではないらしい。 谷口の後ろから、ひょっこりと会場に顔を覗かせた美百合は、目の前に広がった光景を見て、一気に顔色を変える。 無理もない。 周りは美しいドレスで着飾った淑女ばかりだ。 豪華な装飾、贅を凝らした料理。 その中にたったひとりカエルジャージを身につけた自分。 恥いって当たり前。 幸い谷口が身分を提示していたお陰で銃は向けられていないが、きっと銃口よりも冷たく感じる視線を体感していることだろう。 「誰?」 「場違いですわ」 「……恥ずかしいお方」 容赦のないヒソヒソ声が、会場のあちこちでささやき交わされている。 嘲笑を含んだ眼差しは、ナイフの刃よりするどく、美百合に突き刺さっているのではないか。
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