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『細君をこのような目に合わせて、有坂は一体なにを企んでいる』
と目で探せば、龍一がそんな美百合の前にスッと進み出たところだった。
会場の真ん中、ちょうど人波が割れて出来た通路に、スポットライトを浴びながら花道を登場する役者のように歩いていく。
そしてカエルジャージ姿の美百合の前で、いきなりひざまずいた。
「!」
見上げる眼差しは、これほどない優しいものだ。
その表情と相まって、文字通り、息を飲む美しさ。
龍一は硬直している美百合の手を取ると、騎士さながらに、そっとその指先に口づける。
それから傍らに寄り添うように立ちあがると、誰が見てもめまいがするような眩しい笑みを浮かべて、
「紹介しましょう。俺の愛する妻です」
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