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会場中、開いた口が塞がらない。
淑女たちはまだ目を奪われたままだし、紳士は目をひん剥いている。
龍一の美貌に耐性のある桜庭だけが、いち早く我を取り戻した。
それでも、流れてきた龍一の視線につい頬を赤らめてしまいながらも、
『早く帰れ』
ヒラヒラと手のひらを動かす。
すると、龍一はワルツを踊る優雅な足取りでターンすると、まるで何事もなかったかのように、さっさと会場を出て行った。
――ザワリ――
三人の姿が見えなくなってから、ようやく空気が好奇の色にざわめき出す。
さてこの騒動をどう収めようかと、桜庭が頭を悩ませていると、タイミング良く王女の来場を使者が告げる。
客人たちはあっという間に口をつぐむと、背筋を伸ばして王女を迎える準備を始めた。
桜庭はやっと、ホッと息がつけた気がした。
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