7 ガーベラ(謎のような美しさ)

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さて有坂龍一が、自分の妻の痴態を収めたデータの存在を残しておくわけは無いと思うが、 人の記憶や噂話は、そう簡単に消えるものではない。 そのデータが今後、『金』や『何か』に利用できると考える輩は、きっと存在するだろう。 そして血眼になって探し出そうとするのだ。 欲にまみれたこの社会は、そんなもの。 だから有坂龍一は、人間の記憶を塗り替えることにした。 有坂龍一の容姿は、その世界ではあまりにも有名だ。 茶色い髪に茶色い瞳をした超絶イケメン。 今夜は表立っての素性は伏せていたとはいえ、『有坂龍一』を知る者は、とっくにこの男の存在に気がついている。 何故この会場にいるのか、龍一の一挙一足にいちいち想像を働かせていたことだろう。 それがいきなり、あのカエルジャージ姿の少女のような顔をした女を、数多の著名人の前で、 「愛する妻です」 と紹介した。 驚いただろう。 慌てただろう。 そして思ったはずだ。 彼女がもしも本物なら、 『妖艶に乱れる姿など、ありえない』 と。 なんたってカエルジャージだ。 つまり、有坂龍一の妻の姿を目の当たりにした彼らの頭の中で、 『そのデータは偽物だったのだ』 と誘導される。
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